その曲の作詞者は石橋凌ではない

『輪るピングドラム』でARBの楽曲を使っている理由について、幾原監督は雑誌インタビューで以下のように述べている。

石橋凌さんの詞が好きだったんです。そこの好き度は寺山さんと同レベルですね。とにかく言葉にすごく力があって、おそらく僕も、石橋さんの言葉に影響を受けているのは間違いない。その言葉をお借りしたいと思った。
<<オトナアニメVol.22(洋泉社) p.60>> ※寺山さんとは詩人・劇作家の寺山修司のこと

しかし、『輪るピングドラム』で使われているARBの楽曲の中で、石橋凌の作詞ではない曲がかなりある。数字を挙げよう。20話まで放映されたところでARBの曲は7曲使われているが、うち3曲はIII期のギタリスト白浜久の作詞と思われる。

もちろん、石橋凌の詞だと思ってしまうのも無理はない状況が当時あったので、このページではそのことについてまず述べておこうと思う。そして、石橋凌と白浜久の詞の違い・見分け方(?)についても記載する。

(1) ARBの曲を作詞していたのは、それまで殆どが石橋凌だった

I期、II期において、ほとんどのARBの楽曲を作詞していたのは石橋凌だった。ごく一部の例外として、元サンハウスのボーカリストだったキクこと柴山俊之が『Tokyo Cityは風だらけ』などを作詞しているが、数は非常に少ない。

だから、ARBの曲を作詞しているのは基本、石橋凌だと思うもの無理はない。

(2) クレジットが連名で、方向性も似ていた

III期になって、作詞者のクレジットは基本、石橋凌と白浜久が連名で記載されるようになった(作曲も同様)。これが曲者で、実際にはどちらかが作詞したものの一部だけを他方が手直しするというスタイルが多かったようだし、中には完全に片方だけで作った詞もあるようだが、どちらのケースでも連名クレジットにするというルール、バンド内での取り決めがあったようなのだ。

しかも石橋凌・白浜久、両者の書く詞はどちらも、いわゆる“社会的”なものが多く、大まかな方向性は似ている。

だから、I期・II期と同様にIII期の歌詞も大半は石橋凌が書いていると受け止められても仕方ない。

白浜久のソロを知ると違いがわかる

白浜久はARBに加入する前、ソロ・アーティストとしてデビューしており、ソロ・アルバムも2枚リリースしている。さらにARB加入後に1枚、解散後にはメジャーから1枚、自主制作で多数のソロ・アルバムを出している。これらのアルバムに収録されている楽曲は白浜久の作詞であり、その詞の内容や言い回しのクセを知っていると、ARBの曲の中でも「あ、これは白浜久の詞だ」と結構わかる。

また、白浜久はARB解散後のソロライブで、ARBIII期の楽曲を演奏することがあるが、それは、基本、白浜自身が作詞した曲である。石橋凌が手を加えた後の詞(つまりARBの楽曲として発表された詞)で歌うこともあれば、手を加える前の「白浜久オリジナル・バージョン」として歌うこともあるが、“ソロライブで歌った曲は白浜作詞”とほぼ確実視できる。

白浜久の詞の特徴

・えげつない。辛辣。

・石橋凌が誰でも意味がわかるような英単語を使うのに対し、白浜久はちょっと難しい英単語を使う。

・日本語もわりと同様。石橋の方がわかりやすい。

・石橋の詞は「熱く」呼びかけ、ある意味「青い」が、白浜の詞は「クール」に突き放す。

・白浜は、「〜のかい」「〜だろう」「〜さ」という語尾をよく使う。「〜しよう」という語尾は石橋に多い。

FIFTY−FIFTYの歌詞はおそらく共作

アルバム『PAPERS BED』収録の『FIFTY-FIFTY』という曲は、タイトルどおり(?)歌詞も共作というか半分ずつ作ったんじゃないだろうか。1番が石橋、2番が白浜。特徴が良く出ている。なお、3番は良くわからないのだけど、共作か。

1.俺とお前のバランスはいつも/ガキの頃からFIFTY-FIFTY/危ない橋もいくつか渡り/ガラクタの中 転がってきた/駆け引きなしに 夢を追いかける/世界の果てまでお前と追いかける
2.錆びたモラルと揺れるデモクラシー/右と左へ俺たちを分ける/欲望どもが新しい地図に/ナイフつきたて切り裂いてゆく/小細工抜きに恋を語り合う/鏡の中の素顔のそのままで

しかし、2番の5行目「小細工〜」だけは石橋っぽいがどうだろう。

OWE MY OWN

第III期の代表曲で、ファンからも人気があり、選曲の流れ的に『輪るピングドラム』のクライマックスで使われる最有力候補曲だと、私が思っているのが『OWE MY OWN』。アルバム『Rock Over Japan』に収録されている。この曲も白浜久が主体になって作詞した曲だ。白浜ソロ版とARB版でどんな箇所が違っているか示す。

白浜久ソロ・ライブでの歌詞
夢の隙間から/覗いては消える
現実に蹴飛ばされ/毛布をかぶる
ARBでの歌詞
夢の隙間から/覗いては消える
現実を踏みつけて/光を探し


白浜久ソロ・ライブでの歌詞
月日を重ね/辛い(暗い?)夜に耐えて
ちっぽけな手の中に/残ったもの
それは永遠に/心の中で
輝き続けるだろう/ダイヤのように
ARBでの歌詞
月日を重ね/不安と期待に
眠れぬ夜が過ぎて/残るものは
ダイヤのように/心の中で
輝き続けている/蒼き怒りよ

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